冷えをとり、あなた本来の元気なからだを取り戻しましょう

当鍼灸院で取り入れている積聚治療(しゃくじゅちりょう)の基本理念に「病の原因は冷えに帰着する」というものがあります。これは、病の原因を東洋医学的に突き詰めていくと、「冷え」にたどり着くということを言いあらわしています。
一般に、冷えというと「冷え性」とか「手足が冷たい」ということを思い浮かべますが、積聚治療ではもっと大きな意味を持っています。
ここでは、「施術理念」とその根幹になる「冷え」の意味について、詳しくお伝えしたいと思います。

生理的な冷え

人は誰でも「精気(せいき)」を持ってこの世に生を受けます。精気とは、生まれ出た時にそのヒトに与えられた生命の根元と考えてください。科学的な言葉では、生命力や生命エネルギーと言い換えると分かり易いでしょうか。
人は日々ほんの少しずつこの精気(≒生命エネルギー)を使いながら暮らしているとします。年齢とともに、非常にゆっくりと精気は低下していきます。それに伴い、体の様々な機能がゆっくりと衰えていきます。そして、精気を使い切ると、人は寿命を迎えます。

生理的な冷えを表す曲線画像
積聚治療では、「精気(≒生命エネルギー)が減少して、体の機能が本来の働きをしなくなっていくこと」を「体が冷える」と表現しています。
そして、寿命を迎えるとすべての機能が停止して、体はまさに冷たくなります。これは、すべての人に起こる「生理的な冷え」で、誰も避けては通れないものです。生まれた瞬間からとてもとても僅かですが、「生理的な冷え」は始まります。
仮に冷えが「生理的な冷え」だけであるなら、そのヒトは言わば健康的に老衰して寿命を迎えることになるでしょう。心身が健康ならば、精気は120歳ぐらいで尽きるでしょう。ちなみに、日本人の平均年齢は84歳(2015年WHO 発表)、最高齢は117歳です。

病的な冷え

しかし、人生では、往々にして途中で余分に精気(≒生命エネルギー)を消耗するようなことが起こります。仕事のし過ぎや、過度のストレス、食べ過ぎや飲み過ぎ、あるいは、事故などで外傷を受けた時などです。これらがきっかけになって、精気の低下を増長させ、「生理的な冷え」とは異なる「病的な冷え」を生じると考えています。
すると、何らかの不調があられてきます。初めは軽い肩こりや腰痛、むくみなどです。妊婦さんの場合は、軽い便秘や腰痛、つわりなどです。無理をしなければ、いつの間にか治ってしまうような症状です。
病的な冷えを表す曲線画像
ところが、無理が続き精気の減衰が大きくなると、重い肩こりや腰痛、膝痛、手足の冷え、倦怠感、イライラ、頭痛、自律神経失調症状、月経に伴う辛い症状、更年期障害、不妊など様々な不調があらわれます。酷くなると慢性化してしまいます。妊婦さんは、つわりが重くなったり、腰や股関節などの痛みがいつまでも続いたり、逆子がなかなか戻らなかったりするかもしれません。さらに精気を消耗すると、膠原病、がん、うつ、パニック障害、脊柱管狭窄症など現代医学でも難しい病気を招くことになります。
このような様々な不調を招くことになる「精気の低下」のことを「病的な冷え」と呼んでいます。これが、積聚治療における「冷え」で、病の根本原因と考えています。
<参考文献 小林詔司:積聚治療 医道の日本社>

病的な冷えは、自己治癒力や妊娠力を低下させる

では、冷えが生じるとどうして様々な不調があらわれるのでしょうか。
みなさんのからだには、健康な日々を送り、新しい命を育むために、様々な力(機能)が備わっています。たとえば、ウイルスなどからからだを守る力(免疫力)や、古くなった細胞を新しい細胞に再生する力、憂鬱や落ち込んだ気持から立ち直る力などです。東洋医学ではこれらの力を総称して自己治癒力(自然治癒力)と呼んでいます。また、妊娠して赤ちゃんを育む妊娠力などもあります。
すべての人のからだに備わっているこれらの力は、とても素晴らしいものだと思います。薬も病院もない時代から人々が健康に暮らし、新しい命を授かってこられたのは、ひとえに自己治癒力や妊娠力があったからではないでしょうか。

自己治癒力や妊娠力は、命の根源である精気(≒生命エネルギー)を元にして、24時間365日休むことなく体を健康に保っていますが、仕事などの無理が続いて「病的な冷え」が生じると、低下してしまうことがあると考えています。
身近でわかりやすい風邪を例にみてみましょう。私たちの周りは風邪ウイルスや細菌などでいっぱいです。普段は、喉や鼻などの粘膜で、白血球などの免疫力(自己治癒力)が外敵の侵入を防いでいます。ところが、冷えが生じると免疫力が一時的に弱まり、ウイルスが体内に侵入してきて風邪をひくことがあります。実際に、体温が1度下がると免疫力は30%も低下することが科学的にわかっています。身体を休めれば体力は戻り、「病的な冷え」は解消されて免疫力が風邪ウイルスを退治してくれます。しかし、無理を続けると冷えは強くなり、免疫力は低下してしまいます。その結果、ウイルスをなかなか退治できず、風邪が長引くことになるのです。さらに冷えが進むと、肺炎などになってしまうこともあるでしょう。

腰痛、肩こりなどの症状も、本来は、自己治癒力で自然に治ってしまうものと考えています。たとえば、人の体は約60兆個の細胞が集まって出来ています。古くなった細胞や傷ついた細胞は、日々、新しい細胞に生まれ変わっています。これも大切な自己治癒力の1つと捉えています。筋肉や骨ももちろん細胞の集まりです。何かのきっかけで腰痛や肩こりになっても、その人の治癒力で元気な細胞が再生されれば、やがて痛みや不快な症状は無くなっていくものだと思います。みなさんもいつの間にか腰痛や肩こりが治っていたという経験があるのではないでしょうか。ところが、ストレスなどが続き「病的な冷え」が生じると、自己治癒力が低下してしまい回復しにくくなるわけです。

精神的な不調も同様です。たとえば、義務感が強く、仕事熱心で、常に他人への配慮を重視する人は、とても気(エネルギー)を使うため、冷えが生じてきます。一生懸命に努力した結果が伴っているうちはエネルギーは回復しますが、成果が出せない状態が続くと、エネルギーは欠乏し、「病的な冷え」が生じてきます。そして、だんだんと自己治癒力は低下してしまい、うつ病やパニック障害を招くことになります。
婦人科疾患が原因で赤ちゃんができにくくなる不妊症や、検査を受けてもはっきりした理由がわからない原因不明の不妊なども、同様に冷えが根底にあると考えています。
このように「病的な冷え」が生じると、何らかの不調があらわれます。無理をしなければ、自己治癒力でやがて元の元気な状態に戻っていきます。しかし、無理が続くと冷えは強まり、病状が悪化したり、慢性化したり、難しい病気を招くことになります。あらわれる病気は、そのヒトの体質、生活習慣、生活環境などの背景により様々です。重要なのは、「様々な不調の根底には、冷えがある」ということです。

背中に鍼を施す様子

冷えをとる施術

当鍼灸院は、「精気を補い、冷えをとる」という施術理念のもと、みなさんの健康を取り戻すお手伝いをさせていただきます。
根本的な原因が解消されれば、ハツラツとした以前のあなたにきっともどれるはずです。

腰に4つの知熱灸を施している様子
院長の写真

著者プロフィール 磯部律元
2013年「はなもも鍼灸治療院」を開設。東洋医学に精通し鍼灸師として数多くの施術を手掛ける。同時に、生理学、解剖学、病理学などを学び、人体のしくみについて造詣を深める。
妊活、妊婦の施術を得意とし、自律神経の乱れや慢性化した痛みなどにも幅広く対応している。のべ1万以上の施術実績を持つ。
根本治療的な鍼灸とここちの良い施術を追求しつづけている。