鍼灸の後にあらわれる様々な反応
鍼灸を受けた後の反応として、多くの方は身体が軽くなった、ポカポカしてきたと言います。また、2~3日経って調子が良くなった、元気になったという方もいらっしゃいます。これは、鍼灸の効果がその人の身体に馴染むのに、個人差があるためと考えられます。
逆に、一時的に体がだるくなるなどの症状が出ることがあります。東洋医学ではこれを瞑眩反応(めんげんはんのう)と言いいます。自己治癒力によって回復していく過程でさまざまな反応があらわれることがあります。
例えば、施術後に痛みを感じることがあります。これは慢性的な肩こりや腰痛などの人に起こることが多いようです。長年凝り固まった筋肉によって圧迫されていると、神経は鈍くなっていきます。鍼灸によって筋肉がゆるみ、血行がよくなると、神経が正常に働きはじめて、痛みを感じられるようになります。
このような身体の反応は、からだが回復していく証です。
また、別のところが痛くなる、ということがあります。たとえば、「施術を受けて右肩の痛みとれたら、今度は左肩が痛くなった」ということがあります。これは痛みを感じるのは一番痛いところなので、右肩がよくなったら、もともと右肩の痛みのために隠れていた左肩の痛みが表にあらわれたためです。
下痢をすることもあります。これは体に溜まっていた有害物質や老廃物を排泄しようと、体が正常に働き始めることでおこります。
瞑眩反応(めんげんはんのう)には、倦怠感、眠気、下痢、痛み、発汗、発熱などの反応があります。
いずれも体が正常な状態に戻そうとするために起こる好転反応で、良い結果が期待できます。
施術を受けた2~3日後に体がすっきりした、調子が良いと感じる方が多くいらっしゃるのもこのためです。
施術後は、自己治癒力の効果を上げるためにも、ゆっくりとお体を休めてください。
瞑眩反応を人体のしくみから紐解く
科学の発展により、病を治すからだの反応、つまり、東洋医学でいう瞑眩反応(好転反応)の実態が、生理学的にもだんだんと明らかになってきました。
病気を治そうとするとき、からだは血管を開き、血流をふやして傷ついた組織を修復しようとします。血液には、修復に必要な酸素と栄養や、細菌などをやっつけてくれる白血球があります。そして、この修復作業のときに分泌されるのが、プロスタグランジンというホルモンです。
プロスタグランジンには、「血管を開く」「痛みを起こす」「発熱させる」という3つの働きがあります。私たちが不快と感じる痛みや熱、赤く腫れあがるなどの症状は、プロスタグランジンの作用で血流が増え組織を修復する際に生じるもので、この苦しい修復プロセスの先に、治癒というゴールが待っています。
痛みや発熱はとても不快なものですが、生理学的にみると、からだが治っていくときに起きる治癒反応のようです。
鍼灸治療のあとに痛みなどの症状が一時的に起きる理由の1つは、からだが傷ついた組織を治そうとしてプロスタグランジンが分泌されるからと考えています。安静にしていれば、やがて、傷ついた組織は修復され、プロスタグランジンは必要なくなり、痛みは自然と消えていきます。
<参考文献:生理学 医歯薬出版株式会社>