安定期の注意点
安定期といっても油断は禁物です。ついつい安全な時期のように思ってしまいますが、実は医学用語に「安定期」という言葉はありません。これは「妊娠に安全な時期はない」という基本的な考え方がベースにあるからだと思います。妊娠中は何が起きても不思議ではありません。
統計的にみても、安定期のトラブルは妊娠初期に比べれば少ないもののあります。
たとえば、妊娠初期は6~7人に1人の割合で流産を経験し、流産全体の80%を占めています。安定期に入ると、初期に比べると少なくなりますが、それでも流産全体の5~10%はこの時期に起こっています。早産は、全妊娠の約5%(年間60,000件前後)で起こり、そのうち安定期にあたる22週~28週未満の早産は、約0.2%、年間で2,500件前後あります。
確かに、安定期は初期にくらべればトラブルの目立たない時期です。胎盤も完成して、初期流産の危険性が下がるので、俗に「安定期」と呼ばれているのかもしれません。
でも、流産や早産のリスクがまったく無いというわけではありません。不安になりすぎる必要はありませんが、危険性がゼロではないことは知っておきましょう。
安定期の旅行の注意点
「妊娠中期に入りからだも安定してきたので、今のうちに旅行にでも行きたい。でも、もしお腹の赤ちゃんに何かあったら」と迷っている方もいるのでないでしょうか。旅行に行っても何もなかったという妊婦さんがいる一方で、トラブルに見舞われた方がいるのも事実。そこで、ここでは、安定期の旅行の注意点についてお話します。
旅行中やその帰宅後に起こるトラブルの原因の多くは、母体の「気虚(ききょ)」によるものと考えています。
「気」とはわかりやすく言うとエネルギーを意味し、エネルギーが欠乏した状態が「気虚」です。気が虚する、つまり、エネルギーが不足すると母体は冷え、赤ちゃんを保てなくなり流産や早産が起こります。
旅行中に食生活が乱れたり、寝不足で疲労がたまったりすると、母体は「気虚」を起こしかねません。
東洋医学では、食事は「後天の精」を補うとされています。「後天」とは「生まれ出た後のこと」を指し、「精」とは「気」を意味します。つまり、食事は、元気に生きていくための気(エネルギー)を補うものということです。もちろん妊娠中は、赤ちゃんを育むために必要な気(エネルギー)の源(みなもと)になります。
ですから、旅行中に食事が乱れたり、無理をしたりすると、気が不足して、思わぬトラブルを招くことになります。旅先では、バランスのとれた食事と規則正しい生活を心掛け、気が欠乏しないように注意してください。
個人的には、できれば、旅行はひかえ、普通に日常を送ることが安産に繋がると思います。もし、実家に帰るなど遠出の予定があるときや、どうしても今のうちに旅行に行っておきたい場合は、普段から体調管理を心掛け、気を充実させておくことが大切です。そして、自分の体に無理がないか計画を今一度見直し、産婦人科の医師に必ず相談しましょう。
「気虚」のはじまりは、たとえ自分自身であっても気がつきにくいものです。東洋医学に精通した鍼灸師に一度みてもらうのもいいと思います。
<参考文献:杉俊隆著 不育症学級 金原出版、藤井和行監修 流産 東京図書、病気がみえるvol10産科 メディックメディア>