たった1つの受精卵が赤ちゃんに成長するまでの過程

赤ちゃんのはじまりは、受精卵という1㎜にも満たないたった1つの細胞です。ここから分裂と分化を繰り返して、数十兆個の細胞で構成される約3,000gの胎児にまで成長します。
では、受精卵の誕生から胎児に成長するまでの過程をみていきましょう。
<目次>
1.妊娠初期の様子(0週~15週)
2.妊娠中期の様子(16週~27週)
3.妊娠後期の様子(28週~39週)
【参考1:胎児発育曲線】
【参考2:受精卵の分裂と分化】
【参考3:最大の細胞と最小の細胞】

妊娠初期の様子(0週~15週)

新しい命が芽生え、脳や骨、内臓など大切な器官が発生しながら、だんだん人の姿になっていきます。

妊娠1か月(0週~3週)

最終月経の第1日目を妊娠0週0日として数えます。
妊娠のはじまりは最終月経の1日目から約2週後。卵子が卵巣から飛び出し(排卵し)、卵管に吸い込まれていきます。そのとき、卵管の中に入ってきた精子と結ばれると受精卵の誕生です。

まず、受精卵は24時間以内に2つの細胞にわかれます。その後、細胞分裂を繰り返しながら、約1週間かけて卵管から子宮に移動します。
第3週頃、子宮内にたどり着いた受精卵が、子宮粘膜にもぐり込んで着床すると妊娠の成立です。もちろん、まだ人の形はしていません。大きさはわずか1mmくらいです。
この頃は、胎児と呼ばれず、胎芽と呼ばれています。
受精卵が着床するまでの画像

着床後、胎芽は急速に成長を始めます。初めのころは、1日ごとにサイズが2倍に膨れ上がっていきます。
着床後5~6日経つと、胎芽と母体を結ぶ胎盤ができはじめます。胎芽は胎盤を通して、お母さんのからだから酸素や栄養を受けとります。

妊娠2か月(4週~7週)

妊娠4週頃になると、超音波診断装置で胎嚢(たいのう)がみえるようになります。

まだ、からだの影も形もまったくありませんが、1つ1つの細胞が分化して、からだの様々な組織や器官が発生し始めます。

まず、原始生殖細胞ができます。原始生殖細胞とは、この先、女の子に成長すれば卵子に、男の子ならば精子になる細胞です。生まれてくる赤ちゃんのなかでもっとも早くつくられるのは「さらに次の世代の命」という、とても神秘的なことが起きています。
やがて生まれる胎児が成長して思春期をむかえるまで、原始生殖細胞は生殖腺の中で休眠状態に入ります。

妊娠5週頃になると、胎芽は5㎜くらいに成長して、心臓と脳が形になってきます。

妊娠6週頃、超音波診断装置で心拍の動きが見えるようになります。

心臓はまだ完全には出来上がっていませんが、血液を送りはじめます。
それまで形のなかった目、耳、手足、消化器が発生し始め、身体もできてきます。胎盤はぐんぐん大きくなります。

妊娠7週頃、羊水にプカプカ浮いている赤ちゃんは2頭身くらいになり、手足ものびてきます。目の輪郭がわかるようになり、肺もつくられ始めます。
身長は1~2㎝くらい、体重は4g近くになります。

妊娠3か月(8週~11週)

妊娠8週になると、それまで胎芽と呼ばれていた赤ちゃんは、胎児と呼ばれるようになります。

筋肉があらわれ、小さな骨格もみえてきます。脳の神経、鼻や唇、歯のもとになるものも発生し始めます。

妊娠9週~10週の終わりにかけて、とても人らしくなってきます。
胴が伸びて三頭身くらいになります。耳は形作られ、黒い目もはっきりとしてきて、まぶたもできてきます。
この頃になると外生殖器も形成されはじめます。

手足の指は1本1本完全にわかれて、だいぶ赤ちゃんらしくみえます。手と手をあわせるような単純な動作もするようになります。

妊娠11週頃になると、すべての内臓器官が形を成してきます。小さな心臓は心室と心房に分かれ、お母さんの倍の速さで脈をうつようになります。
身長は4㎝ほどになり、体重は20~30gになります。

妊娠4か月(12週~15週)

はなれていた両目は近づき、顔のつくりが整ってきます。小さな耳たぶや、爪、かみの毛など細かな部分もつくられてきます。あごの骨の中に、歯になる小さな突起もできます。

妊娠15週頃、胎盤が完成して、流産の心配は少なくなります。

身長は約16㎝、体重は約100gになります。

妊娠中期の様子(16週~27週)

赤ちゃんはいよいよ動き始めます。

妊娠5か月(16週~19週)

羊水の中で手足を動かしたり、背中を伸ばしたり、運動をはじめるようになります。子宮の壁にぶつかることもあります。これに気づくお母さんもいるかもしれません。

皮膚は透明で産毛におおわれています。髪の毛や眉毛が伸び始めます。指には指紋があらわれます。
皮下脂肪もつきはじめ、からだが丸くなってきます。

妊娠19週頃には、骨格がしっかりしてきて内臓もそれぞれの位置に納まります。
身長は約25㎝、体重は約250gになります(【参考1:胎児発育曲線】参照)。

妊娠6か月(20週~23週)

妊娠20週をすぎると、お母さんは胎動を感じとれるようになります。

眠ったり、しゃっくりをしたり、赤ちゃんらしいしぐさをします。

皮膚の表面には胎脂という、皮脂とはがれた皮膚の混じったヌルヌルした液体が付着します。皮膚を保護する役目や、出産時に胎児が狭い産道をスムーズに抜け出られる役割を担っています。

腎臓が働きはじめ、羊水を飲み込んで尿として排泄するようになります。腸には緑色のペースト状をした胎便がたまりますが、出産後に排出されます。

妊娠21週頃になると、赤ちゃんの向きによっては、超音波診断装置で性別がわかるようになります。

髪の毛や眉毛もはっきとしてきて、まつげも生えてきます。
妊娠23週の身長は約30cm、体重は約650gになります(【参考1:胎児発育曲線】参照)。

妊娠7か月(24週~27週)

すべての内臓ができあがり、人としての最小限の機能がそろいました。でも、肺や胃、腸などの各器官はまだ完全には出来上がっていません。

26週頃、脳の発達が進み、自分のからだをコントロールする気配があらわれます。
まぶたの分かれ目がはっきりして、まばたきができるようになります。目の球も運動するようになります。

この時期になると、活発に動きまわるので逆子になることもありますが、まだ、スペースが十分にあるので心配ありません。

妊娠27週、身長は約30cm、体重は約1000gになります(【参考1:胎児発育曲線】参照)。

妊娠後期の様子(28週~39週)

赤ちゃんはめざましい成長をみせ、いよいよ出産の時を迎えます。

妊娠8か月(28週~31週)

28週になると、赤ちゃんは頭を下に向けた姿勢をとります。

この頃になっても頭が上を向いていると逆子です。
週数が進むにつれて赤ちゃんの動けるスペースは狭くなり、だんだん戻りにくくなります。産科で逆子と言われたら、早めに逆子治療をしている鍼灸院に相談するのもいいでしょう。

赤ちゃんは胎盤を通して、お母さんから酸素や栄養などをどんどん吸収して、脂肪も蓄えはじめます。
脳や神経、内臓もだいぶ発達しているので、万が一この時期に生まれても保育器で育つことができます。

妊娠31週の終わりには、身長は約40㎝、体重は1800gほどになります(【参考1:胎児発育曲線】参照)。

妊娠9か月(32週~35週)

妊娠32週に入ると、赤ちゃんはめざましい成長をとげます。皮下脂肪が増えてからだは丸くなり、赤ちゃんらしい体形になります。それにともない体重もぐんぐん増えてきます。
爪が伸び、髪の毛もふさふさしてきます。性器もほぼ完成します。

赤ちゃんは見たり聞いたりできるようになります。味覚も感じます。
お腹の中で、お母さんの会話を聞いているかもしれませんね。

妊娠35週には、身長は約45㎝、体重は2300gくらいになります(【参考1:胎児発育曲線】参照)。

妊娠10か月(36週~39週)

脳、神経、内臓は機能し、骨も固くなります。
頭の大きさはからだの4分の1くらいになります。
胎盤を通して、お母さんから赤ちゃんへ免疫も伝えられます。

身長は50cm前後、体重は約3kgにまで成長して、子宮の中が狭くなってきます(【参考1:胎児発育曲線】参照)。

赤ちゃんは頭を骨盤に向けた姿勢をとり、まもなく誕生です。

【参考1:胎児発育曲線】

*厚生労働省「推定胎児体重と胎児発育曲線」保健指導マニュアルより抜粋

超音波検査による胎児の推定体重を用いています。正常な体重で生まれた赤ちゃんの約95.4%が、上下二本の曲線の間にはいります。

胎児発育曲線(厚生労働省「推定胎児体重と胎児発育曲線」保健指導マニュアルより)

【参考2 :受精卵の分裂と分化】

胎児のからだを構成することになる数十兆個の細胞は、もとは卵子と精子が結合してできた、たったひとつの受精卵細胞です。

受精卵細胞は、お母さんのおなかの中で、「分裂」を繰り返してたくさんの細胞になっていきます。
やがて1つ1つの細胞は「分化」を始めます。分化とは、それぞれの細胞が役割を持つことを言います。

たとえば、柔軟性があり力を発揮する筋肉の細胞と、硬くてからだを支える骨の細胞とではその能力は異なります。筋肉になる細胞は筋肉の役割を果す細胞に、骨になる細胞は骨の役割を果す細胞になります。

細胞たちは、皮膚、筋肉、骨、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓など、それぞれの器官にふさわしい能力を持った細胞に分化していきます。

不思議なことに、一個一個の細胞は、はじめから何の細胞になるのか決められているわけではなく、それぞれが臨機応変に分化します。
もし最初からどの細胞がどの役割を果たすのか、決まってしまっていたら、たまたまその細胞がうまく分化できなかった場合、受精卵の成長はその段階でストップしてしまうことでしょう。

そうならないように、それぞれの細胞が何の細胞になるべきか自分で決めます。あたかも意思をもっているかのように。

そもそも、たったひとつの細胞である受精卵が分裂を繰り返して、数十兆個という膨大な数の細胞からできているからだを作ろうとしているわけです。その過程では、分裂や分化に失敗する細胞がきっといくつかあるはずです。そのたびに細胞たちが修正しながら胎児のからだをつくりあげていくのでしょう。

新しい命の誕生は、実に神秘的ですね。

【参考3:最大の細胞と最小の細胞】

わたしたちのからだは約200種類、60兆個の細胞が集まってできています。各種類の細胞は、それぞれ働きや大きさが異なります。

では、からだのなかで一番大きな細胞は何でしょう。
それは、卵子です。
その大きさは直径0.1ミリメートルととても小さな細胞ですが、ヒトのからだのなかでは最大の細胞です。命のはじまりである卵子が最も大きな細胞です。

一方、一番小さな細胞は精子です。
大きさは全長0.06ミリメートル。頭部だけだとたったの0.005ミリメートルです。これは卵子のわずか20分の1の大きさです。

最大の細胞が卵子で、最小が精子なのには、理由があります。
精子は子宮内を泳いで卵子を探します。最も大きくて動きの遅い細胞と最も小さくてよく動き回る細胞になることで、出会える可能性を最大限に高めたのではないかと考えられています。

<参考文献:厚生労働省「推定胎児体重と胎児発育曲線」 保健指導マニュアル、人体ミクロの大冒険 角川書店、赤ちゃんの誕生 あすなろ書房、病気が見えるVol.10 メディックメディア>

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著者プロフィール 磯部律元

2013年「はなもも鍼灸治療院」を開設。東洋医学に精通し鍼灸師として数多くの施術を手掛ける。同時に、生理学、解剖学、病理学などを学び、人体のしくみについて造詣を深める。
妊活、妊婦の施術を得意とし、自律神経の乱れや慢性化した痛みなどにも幅広く対応している。のべ1万人以上の施術実績を持つ。
根本治療的な鍼灸とここちの良い施術を追求しつづけている。