寝違えを緩和する治療

寝違えの治療の様子

寝違えは、別名「落枕」といいます。朝起きたら、首が痛くてまわらなかったり、後頭部から肩にかけて痛みが走ったりします。このような寝違えは、鍼灸治療で緩和することができます。

寝違えのよくある原因

寝違えは、主に、気血の流れが詰まることで起こります。東洋医学では、人間の体は全身に経絡がめぐっていて、その中を気血が流れていると考えています。その気血が、何らかの理由で詰まると「痛み」を生じます。

人の体はどこであれ、流れがせき止められると痛みがあらわれます。例えば、尿管結石のように、尿の通り道が詰まると激痛が起こります。心臓にしても、冠動脈が詰まれば心筋梗塞を起こし激しい胸痛が起こります。同様に、経絡を流れる気血が詰まると、痛みが起こるというわけです。東洋医学では、これを「不通則痛」といい「通じなければすなわち痛む」と言っています。

寝違えは、無理な姿勢で眠ったり、急激に冷えたり、疲れすぎたりすることによって経絡が侵襲され、気血が詰まることで起こります。

寝違えの対処方法

基本的な対処法は安静です。無理に首を動かしたり、あせって強くもんだりしないように気をつけてください。

保温を心がけるといいでしょう。特に、冷えや過労による寝違えは、患部を冷やすと長引くことがあるので気をつけましょう。

寝違えを緩和する治療

寝違えは、尿管結石や心筋梗塞の治療のように、詰まりを取り除くことが重要です。個人差はありますが、経験的には1回の施術で痛みの50%以上は和らぎます。

まず、動作確認をして障害を受けている経絡を探し出し、詰まりを解消します。詰まっているところは首や肩だけとは限りません。背中や腰、手足にもみつかることがあります。患部から離れたところの詰まりも丁寧に取り除いてあげることで、回復を早めることができます。

また、寝違えによく効く、天容(てんよう)肩井(けんせい)曲垣(きょくえん)などのツボに鍼灸を施し、患部の緊張とこわばりを緩めます。こういった治療によって、寝違いの痛みを素早く緩和することができます。

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参考:寝違えに効果的なツボ

寝違えの施術によく用いるツボを紹介いたします。セルフケアの参考にしてください。

天容(てんよう)

「天」は鎖骨よりも上の部分を指します。「容」は包み込む、入れる、用いるという意味を持ちます。したがって、天容は、首、頭など鎖骨よりも上の部分のすべての痛みを包み込み、取り除くツボということです。寝違えて首が痛い、うなじがこわばるなど、頸部の痛みを和らげてくれます。

ツボの位置は、下顎の後ろで胸鎖乳突筋(首すじの太い筋肉)との間にあります。

天容のツボの位置を示した図

肩井(けんせい)

「肩」は文字通り肩(かた)を意味し、「井」は井戸をあらわします。すなわち、肩井というツボ名は「肩にある、からだの中のエネルギーが湧き出す井戸のようなツボ」ということを言いあらわしています。

寝違えによる首から肩にかけてのこわばりを取り除いてくれます。

穴の見つけ方は、乳頭から真上にたどった線上で、首の後ろの付け根(第7頚椎)と肩先との真ん中にあります。ここを押すとゴリゴリして気持ちいいです。

肩井のツボの位置を示した図

曲垣(きょくえん)

「曲」は曲がる、「垣」は垣根(かきね)をあらわします。曲垣の位置する肩甲骨の形が、垣根の曲がり角に見えることからこの名前がついています。寝違いをはじめ、五十肩頸肩腕症候群などによる、首・肩の痛みやコリを和らげるのに役立ちます。

ツボの位置は、肩甲骨の上方で内側の角にあります。ここを指で押すと、手のほうにまで鈍い痛みが走ります。

曲垣のツボの位置を示した図

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著者プロフィール 磯部律元

2013年「はなもも鍼灸治療院」を開設。東洋医学に精通し鍼灸師として数多くの施術を手掛ける。同時に、生理学、解剖学、病理学などを学び、人体のしくみについて造詣を深める。
妊活、妊婦の施術を得意とし、自律神経の乱れや慢性化した痛みなどにも幅広く対応している。のべ1万人以上の施術実績を持つ。
根本治療的な鍼灸とここちの良い施術を追求しつづけている。