ストレス社会で暮らす私たちは、自律神経のバランスが乱れやすくなっています。呼吸も気づかないうちに浅くなりがちです。息を深く吸ってゆっくりと吐く「腹式呼吸」を行うことで、バランスをとり戻すことができます。腹式呼吸は誰でも手軽にできる健康法です。
自律神経と呼吸の関係
自律神経は、アクセル役の交感神経とブレーキ役の副交感神経の2つから成り、仕事や家事などの活動時には交感神経が優位に、睡眠などのリラックス時には副交感神経が優位に働くことでうまくバランスを保っています。ところがストレスなどで交感神経がピリピリしていると、スイッチの切り替えがうまくできず、夜眠れなかったり、日中だるさを覚えたりと不調を感じるようになります。また、自律神経の乱れは、免疫力にも影響が及ぶため、風邪をひきやすくなったり体調を崩しやすくなったりします。
通常、私たちは、自律神経を意識的に整えることはできませんが、呼吸を通してケアすることができます。なぜなら呼吸と自律神経の間には、息を吸うときは交感神経が優位になり、息を吐くときは副交感神経が優位になるという関係性があるからです。つまり、意識的に呼吸をすることで、自律神経をセルフケアすることができるのです。その呼吸法が腹式呼吸です。
自律神経のセルフケアに役立つ腹式呼吸のやり方
①背中をまっすぐにのばします。イスに座る、寝る、立つ、どの姿勢でも結構です。
②下腹に力を入れるような感じでお腹をふくらませながら、鼻で大きく息を吸います(約3秒かけます)。このとき、肩を上げないようにします。
③下腹の力を抜くような感じでお腹全体をひっこめながら、口でゆっくりと息を吐きます。息を吸うときの倍の時間(6秒以上)をかけて、肺の空気を全部吐きだすつもりで、ゆっくりと吐き出します。
息を吐くのをゆっくりすればするほど副交感神経が優位になり、交感神経よりに傾いた自律神経バランスを元に戻すことができます。もし、腹式呼吸が難しいという人は、ゆっくりと息を吐くことに集中するだけでも効果的です。
イライラしたときなど、この呼吸法を1分ほど行うと気持ちも落ち着いてきます。自律神経の乱れが気になる方は仕事や家事の合間に毎日行うと、交感神経の緊張が緩んでリフレッシュできます。
たとえば、自然界の綺麗な「気」を空気と一緒に鼻から吸い込み、からだの中心線上を、鼻、胸、下腹部、腰、背中、首、頭部、額、鼻先の順に一周させて口からゆっくりと吐き出します(図)。吐くときは、からだにたまった古い「気」を吐き出すイメージを持つといいです。これは、気功でも使われる呼吸法の1つです。
慣れてきたら10分程度続けるといいでしょう。気を意識することで爽快感が増します。
最後に
腹式呼吸は、自律神経のセルフケアに役立ちます。でも、効果は100%ではありません。日頃から自律神経に優しい生活を心がけた上で、腹式呼吸も取り入れると相乗効果が期待できます。
特にストレスが強い人は、交感神経が優位になりがちです。やっかいな自律神経失調症にならないように、普段から腹式呼吸を行い、心身のリフレッシュを図りましょう。