妊活中はどんな食事をとればよいか、女性も男性も気になるところです。そこで今回は、妊娠に向けて摂取したい栄養素と、食事のとり方についてお話しします。
<目次>
1.妊娠をアシストする、女性におすすめの栄養素
2.元気な精子をつくる、男性におすすめの栄養素
3.妊活中、控えたい食べ物
4.妊活中の食事のとり方、3つのポイント
妊娠をアシストする、女性におすすめの栄養素
ここでは、妊娠を手助けしてくれる栄養成分と、それを含む食品を紹介します。
たんぱく質
たんぱく質は、妊娠に欠かせない基本栄養素です。皮膚、髪の毛、爪、筋肉、骨、血管、内臓など人のからだを構成する重要な材料といえます。もちろん、質の良い卵子をつくるためにも必要不可欠です。
肉類、魚、卵などに多く含まれています。
コレステロール
コレステロール(脂肪)は、女性ホルモンの原料になります。もし、女性ホルモンが不足すると、不妊を招くことも。
コレステロールと聞くとからだに良くないイメージがありますが、適量のコレステロールは女性ホルモンをつくるためには必要不可欠です。無理なダイエットなどで不足しないように気をつけてください。
ちなみに、善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)の2種類がありますが、女性ホルモンの材料になるのは、悪玉の方です。本来は、善も悪もなく、どちらも妊娠になくてはならないものです。ただ、LDLは摂りすぎると病気の原因になるので悪玉と呼ばれているわけです。
鉄分
レバー、牛肉、海藻、アサリ、カキ、ほうれん草、鶏肉などに豊富に含まれています。
実は、お肉と野菜では含まれる鉄分の性質が異なり、からだにより吸収されやすいタイプはお肉の方です。また、タンパク質やビタミンCと一緒にとると吸収率がアップします。タンパク質の塊のお肉とビタミンCを含む野菜を組み合わせれば、鉄分と他の栄養素も摂りやすくなります。

ビタミンE
抗酸化作用があり、若返りのビタミンとして有名なビタミンEは、血流を良くして生殖機能の働きを活性化してくれます。
「妊娠ビタミン」と呼ばれるほどで、妊活に必要な栄養素です。排卵の促進、ホルモン調節、月経周期の正常化、卵子のアンチエイジングといった作用を持ちます。
アーモンドなどのナッツ類、うなぎ、ほうれん草、カボチャ、アボカドなど
カルシウム
骨を丈夫にして、ストレスに強いからだを作るカルシウムは、妊娠に向けたからだ作りに役立ちます。
小松菜などの緑黄色野菜、小魚、ごま、牛乳、チーズなど
ビタミンA
子宮内膜を育て、受精卵が着床しやすい環境をつくってくれます。皮膚や粘膜を正常に保ち、免疫力アップにも役立ちます。
うなぎ、ほうれん草など
ビタミンD
質の良い卵子を育てることで、近年、注目されています。排卵障害を起こす多嚢胞性卵巣症の人には、ビタミンDが不足しているケースが多いという研究報告もあります。
魚、きのこ類、乳製品、肉、卵類など
食物繊維
便秘解消に抜群の効果を発揮します。お通じの調子がよいと新陳代謝が高まります。
ごぼう、いも類、ひじき、こんにゃくなど
葉酸
「胎児の神経管閉鎖障害を予防することが期待できる」とされています。赤ちゃんの神経管は、妊娠のごく初期に作られます。葉酸は、赤ちゃんの成長にとってとても有用な栄養素です。
モロヘイヤ、ほうれん草、春菊などの青菜
ビタミンB12
B12は葉酸を働かせる作用をもっているので、2つ一緒に摂ると効果的です。
牡蠣、鶏のレバー
元気な精子をつくる、男性におすすめの栄養素

亜鉛
男性ホルモンの生成を促します。
カキ、ホタテ貝、牛肉などに豊富です。
アルギニン
精液の80%を占める成分です。
玄米、豆みそ、ごまなど
ビタミンE
生殖機能の働きを向上させます。
アーモンドなどのナッツ類、うなぎ、ほうれん草、アボカドなど
ビタミンA
免疫機能を強化して、ストレスに強いからだをつくります。
レバー、鶏卵、ヤツメウナギなど
ビタミンB
精力増強、疲労回復に効果的です。
豚肉、うなぎ、しいたけ、納豆など
妊活中、控えたい食べ物
冷たい飲食物
冷えは、妊娠にとって大敵です。妊活中は、アイスやジュースなど冷たい飲食物はできるだけ控えましょう。
冷たい物は胃腸の血管を流れる血液を冷やし、冷やされた血液は全身をめぐります。暑い夏には熱中症対策として必要ですが、妊活中は摂り過ぎに注意しましょう。
生肉
トキソプラズマという原虫は、稀に生肉を介して感染することがあります。妊娠初期の女性が感染すると、お腹の赤ちゃんに異常をもたらすことがあります。妊活中は口にしない方が安心です。なお、生魚は大丈夫です。
甘い物
後で詳しくお話しますが、甘い飲食物も少し減らしましょう。
妊活中の食事のとり方、3つのポイント

1.色々な食材でバランスよく
偏った食生活では栄養も偏ることになります。これだけを食べていれば事足りるということはなく、相互に協力しあって働くものです。好きなものだけ食べる、空腹を満たすために食べる、それだけでは妊娠に必要なものはとれません。
普段、私たちが何気なく食べているものには、ビタミンやミネラルの他に、まだわかっていない未知の成分が沢山含まれています。たとえば、トマト1つとってみても869の成分があり、そのうち494の成分は、まだ働きがわかっていません(公益財団法人かずさDNA研究所が2008年に発表「トマトに隠された健康成分を見抜く」)。トマトだけでも500近くの未知の成分があります。他の野菜にもきっとあるはずです。そして、この中には、妊娠を手助けしてくれるものがまだたくさん含まれているかもしれません。だからこそ、食事の内容が偏らないように、1日3食、様々な食材を使ったバランスのいい食事を心がけましょう。
とは言え、家庭と仕事の両立など、女性を取り巻く環境は一昔前と変わってきているのも事実。外食やお惣菜などに頼らざる得ない時は、1~2週間ほど、食事メニューを記録して、不足しそうな栄養はサプリメントなどで補うのも1つの方法です。完璧を求めすぎてストレスにならないように、上手に取り組んでください。
2.栄養の摂りすぎに注意
どんなに妊活に良いとされる栄養素でも、摂り過ぎは禁物です。なぜなら、副作用の心配があるからです。
例えば、最近注目されているビタミンDも、過剰に摂取すると、高カルシウム血症という病気を引き起こすことがあります。高カルシウム血症になると、便秘、食欲不振、悪心・嘔吐、腹痛などの症状があらわれます。
余程極端な食べ方さえしなければこのような心配はありませんが、一度、厚生労働省で推奨されている1日の摂取量(日本人の食事摂取基準(2020 年度版))などを参考にしてみるといいでしょう。何事も適量が大切です。
3.季節にあった食べ方

昔は旬のものを食べることで、うまく体温調整ができていました。一方、今は真冬でも夏野菜を食べることができるため、身体が冷えやすい傾向にあります。でも、トマトやナスなどの夏野菜もスープなどにすると身体を温めてくれます。スープも一緒に飲み干せば、溶け込んだ栄養素もすべてとることができます。
各食材には、妊娠に必要な栄養素が含まれているので、夏野菜は身体を冷やすから食べないではなく、調理の工夫をして季節にあった食べ方をしましょう。
温性の食材=身体を温める作用
カボチャ、ショウガ、ニンニク、ネギ、ニンジン、唐辛子、マグロ、イワシ、アジ、サバ、豚肉、牛肉、レバー、リンゴ、味噌、玄米など
冷性の食材=体内の熱を下げる作用
トマト、ナス、キュウリ、セロリ、レタス、アサリ、カキ、バナナ、スイカ、メロン、ナシ、白砂糖、小麦粉など
ここで注目したいのは、砂糖と小麦粉です。
砂糖の原料のさとうきびは、南の地方で採れます。暑い南方で採れる食材には、体内の熱を下げる作用を持つものが多くあります。さとうきびもその1つです。ケーキやチョコなど甘い食べ物は、摂り過ぎないように気をつけてください。
そして、もう1つは小麦粉です。最近はお米のかわりに、パンやパスタを主食にしている人もいるのではないでしょうか。これらも体内の熱を下げる作用があるので、毎日、主食にすることは控えた方がよさそうです。甘い物と同様に、時々楽しみで食べるのが良いでしょう。
このように各食材にはそれぞれ働きがあり、大切な栄養素があります。旬の物を中心に色々な食材を食べましょう。