基礎体温とは、生命維持に必要な最小限のエネルギーしか消費していないときの体温のことです。言いかえると、呼吸や心拍など生きるために必要な最低限の活動しかしていないときの体温、つまり、<睡眠中の体温>のことです。
女性のからだは、月経周期にあわせて基礎体温が変化するので、3か月くらい測っていると、月経周期やホルモンの分泌状況がわかってきます。また、排卵日も予測できるようになり、それにあわせてタイミングをとれば、妊娠の確率を高めることができます。
妊娠を望む人にとって基礎体温を測る最大のメリットは、<妊娠しやすい時期>を知ることです。
目次
1.基礎体温の測り方
2.基礎体温表から妊娠しやすい日を予測する
参考1:より正確に排卵日を予測する
参考2:基礎体温表からわかるからだのトラブル
基礎体温の測り方
目覚めてすぐに測る
正しい基礎体温を知るには、できる限り睡眠に近い状態で測ることが大切です。少し動いただけでも体温は上昇するので、朝目覚めたら起き上がらずに、ふとんの中ですぐに検温します。
測り方は、婦人体温計を口の中に入れ、舌の下にはさんで計ります。毎朝同じ時間に測定しますが、それが難しい場合でも、目覚めてすぐに測ることだけは守りましょう。
睡眠中は代謝が下がって、体温が安定します。4時間以上眠ると、運動や消化活動による体温上昇の影響を受けなくなります。また、不規則な生活をしていると正確な数値がでないので、最低でも毎日4時間以上の睡眠をとり、検温するのが望ましいです。
ただし、寝るのが朝方では、いくら4時間以上睡眠をとったとしても、その結果は信頼できません。
【ポイント】
朝、目覚めたらすぐに検温する
毎日4時間以上の睡眠をとる
毎朝同じ時間に測る
基礎体温表に記録する
枕元に、婦人体温計と一緒に基礎体温表と筆記用具も用意しておき、体温を測定したらその場ですぐに記入します。アプリを使うのも便利です。
表に書き込みグラフにすることで、体温の推移がわかりやすくなります。
体温の他に、次の項目も記録しましょう。
・月経の時期
生理のあった日にマークなどを記入します。出血の量も書いておくとより正確になります。
・タイミングをとった日
排卵日と大きくずれていないかの確認ができます。忘れずに記録しましょう。
・おりものの変化や下腹部痛の有無
おりものの状態や下腹部の張りや痛みの有無を記録しておくと、排卵の時期がいつ頃なのかわかってきます。
・その他
基礎体温はちょっとした体調の変化にも影響を受けます。かぜ、飲酒、睡眠不足、旅行など、普段の生活と違うことがあったときは、備考欄に記録しておきましょう。また、検温する前にうっかり起き上がってしまっても、その時点の体温を測り、「着替えの後」などとその時の状況を記入しておきましょう。
もし、基礎体温を測り忘れたら、その日は表を空欄にして、次の日からまた測りましょう。1日も欠かさず測ることにこだわると、ストレスになってしまいます。測定できない日があっても気にせず、「また明日から」と継続することが大切です。
【ポイント】
検温したら基礎体温表にすぐに記入する
体温の他に、生理、おりもの、下腹部痛、性交などの有無を記録する
測り忘れても気にせず、気楽に続ける
基礎体温表から妊娠しやすい日を予測する
では、基礎体温表の見方と妊娠しやすい日の予測方法についてみていきましょう。
理想的な基礎体温表は二相にわかれる
基礎体温は本来、一定しているものですが、健康な女性の場合は0.2~0.5℃くらいの間で変化します。これは基礎体温が、月経周期によって変わるホルモン分泌の影響を受けるからです。
ホルモンの分泌が正常の場合、図1のように基礎体温表は二相に分かれます。体温が低い時期を低温期、高い時期を高温期といいます。
月経開始日から約2週間は低温期が続き、排卵を境に体温は上昇して、次の月経までの約2週間、高温期が続きます。
理想的な基礎体温は、低温期から高温期に移る際に、体温が急上昇することです。低温期と高温期の体温差が0.3℃以上あれば正常です。
基礎体温は、排卵後に卵巣から分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)の作用により上昇します。二相にはっきりと分かれるのは、ホルモンが正常に分泌され、排卵が起きていることを示しています。
逆に、はっきりと二相に分かれない場合、何らかのトラブルを抱えている可能性があります。(参考2:基礎体温表からわかるからだのトラブル)
【ポイント】
基礎体温表が二相にわかれるのは、排卵が起きている証
体温が上がるときに排卵が起きる
この時期、低温期の最後にもう一段階体温が下がる日(最低体温日)があり、この前後が排卵日です(図2)。
しかし、排卵日は個人差があり、最低体温日やその前日、または翌日など、人によってさまざまです。なかには、明らかな最低体温日がない人も。
このように基礎体温だけで排卵日を特定するのは難しいのですが、二相性に分かれていれば、ある程度の範囲内で排卵日を予想することができます。3か月くらい基礎体温表をつけていると、ご自身の排卵周期がわかってきます。
【ポイント】
最低体温日の前後が排卵日
妊娠しやすい日
基礎体温表をつけて排卵周期がわかったら、妊娠しやすい日を予測しタイミングをとりましょう。
卵子の生存期間は排卵後およそ1日、精子は射精後およそ3日です。ですから、排卵日の前の3日間と排卵後の1日にタイミングをとると妊娠しやすいことになります。
でも実際は、前述のように排卵日は2~3日ずれることがあるので、排卵日を挟んだ6日間にタイミングをとると妊娠しやすくなると考えます(図3)。
生存期間の長い精子が先に卵管内にたどり着き、排卵する卵子を待ち受けていると理想的です。
【ポイント】
排卵前3日から排卵後2日の6日間が妊娠しやすい期間
参考1:より正確に排卵日を予測する
より正確に排卵日を知りたい場合は、基礎体温表に加え、市販の排卵日検査薬を使ったり、おりもの(子宮頚管粘液)をチェックしたりします。
・排卵日検査薬
排卵日検査薬は、排卵の直前に多量に分泌される黄体化ホルモン(LH)の尿中濃度を測定することで排卵日を調べます。
基礎体温表と併せて使うとさらに正確になります。
・おりものをチェック
おりものは排卵周期とともに分泌量や状態が変化します。指にとって確認します。排卵日が近づくと、おりものの量も粘稠性(のびぐあい)も増します。透明で粘り気があり、10㎝くらいのびれば排卵日直前です。
参考2:基礎体温表からわかるからだのトラブル
基礎体温の変化は、女性の生殖機能の健康状態も反映しています。
基礎体温表が次のようなパターンを描く場合、妊娠を妨げるトラブルが潜んでいる疑いがあります。
すべてのトラブルがこのパターンにきちんとあてはまるわけではありませんが、ご自身の基礎体温表と照らし合わせることで、直接見ることができない卵胞の成長具合や子宮内膜の様子などをある程度知ることができます。トラブルの早期発見に役立てましょう。
妊娠しにくい人に、比較的多くみられるタイプです。
睡眠不足が続いたり、生活が不規則だったりするとこのようなパターンを描きます。
自律神経が疲れているかもしれません。自律神経の乱れは女性ホルモンの分泌に影響します。まずは、生活習慣を見直して体調を整えましょう(参考:自律神経にとって優しい生活スタイル)。
排卵が起きていない可能性があります。
通常、排卵すると、卵胞は黄体に変化して黄体ホルモンを分泌し、基礎体温は急上昇します。基礎体温が上がらないということは、無排卵が疑われます。
排卵が起きなくても、まれに月経のような出血がありますがこれは無排卵の月経です。
子宮内膜の成熟が十分でない疑いがあります。
通常、黄体ホルモンが分泌されると基礎体温は上昇します。体温の上昇が小さいということは、黄体ホルモンの分泌量が少ない可能性があります。
黄体ホルモンが不足すると子宮内膜が成熟できず、せっかく受精卵ができても着床不全になることも。
グラフがこのパターンの場合、黄体の機能が低下する黄体機能不全の疑いがあります。
卵胞の成長が十分でない疑いがあります。
低温期は、卵胞が成熟する時期です。低温期が長いということは、卵胞がなかなか成長しないことを示唆しています。
多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、卵巣の老化など、排卵障害につながる可能性も考えられます。
卵胞が未成熟、あるいは、黄体機能不全の疑いがあります。
高温期が7日以内と異常に短い場合、無排卵の疑いがあります。また、高温期が短いということは、黄体ホルモンの分泌が少ないということです。着床不全を起こす黄体機能不全の可能性も考えられます。
排卵はあっても黄体ホルモンの分泌量が少ないことが伺えます。
せっかく排卵しても、子宮内膜が十分に成長できず、受精卵が着床不全になることも。
また、排卵障害につながる黄体化非破裂卵胞(卵胞が破裂しないため、卵子が飛び出せない)の可能性も考えられます。
このパターンは低温期から高温期への移行がわかりにくく、排卵日を見つけるのが難しいこともあります。その場合は、排卵日検査薬やおりもののチェックを併用しましょう。
このパターンは、トラブルではありません。
妊娠している可能性があります。
高温期が16日以上続いているなら、早めに産婦人科へいきましょう。